大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成5年(行コ)142号 判決 1994年2月10日

控訴人

津留憲二

被控訴人

防衛庁長官愛知和男

右指定代理人

飯塚洋

森和雄

植村敏紀

河津忠志

田崎守男

江頭哲也

柏木康久

今田清三

林田和彦

菅野静夫

大森昭仁

有澤信彦

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  本件を東京地方裁判所に差し戻す。

二  被控訴人

控訴棄却

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

第三証拠

原審及び当審における記録中の証拠目録の記載を引用する(略)。

理由

一  当裁判所も控訴人の本件各訴えはいずれも不適法であるから却下を免れないと判断するものであり、その理由は、次に付加するほかは、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

原判決七枚目裏四行目の末尾(本誌六四四号<以下同じ>36頁4段9行目)に行を改めて次のとおり加える。

「また、本件各訴えのうち、被控訴人に対し右免職処分を撤回し控訴人の原隊復帰を求める部分は、裁判所に行政庁に対して作為を命ずることを求める義務づけ訴訟に該当するところ、控訴人は、既に本件各処分の取消しを求めて東京地方裁判所に訴えを提起し(同裁判所平成三年(行ウ)第二二一号)、平成五年七月六日現在上告審に係属中であることが証拠(<証拠略>)及び原審記録上認められ、控訴人は、取消訴訟の提起という適切な救済方法を講じており、控訴人の右訴えが適法で、かつ理由のあるものであれば、これにより救済目的を達成することが可能であるから、右取消訴訟とは別に控訴人の原隊復帰を求める義務づけ訴訟を認める必要性はなく、このような義務づけ訴訟を許容することはできない。

したがって、この点からしても、本件各訴えのうち、控訴人の原隊復帰を求める部分は不適法であるといわなければならない。」

二  なお、控訴人は、原審が控訴人の申し出た証人を調べずに判決をしたことは、憲法三二条によって保障された「裁判を受ける権利」を空虚なものとする旨主張するが、不適法な訴えについては請求の実体上の当否について判断する必要がないから、原審裁判所が当事者の申し出た証人を採用せずに訴えを却下する判決をしても、これが憲法三二条に違反するいわれはなく、控訴人の右主張は採用することができない。

三  したがって、控訴人の本件各訴えを却下した原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。

よって、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 時岡泰 裁判官 大谷正治 裁判官 小野剛)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例